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スモークを焚いて照明を落とすと海の中・・・に見えますか?
『疑似海底』と言います


* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 303 <フィルムとコマの話 その56> 馬の足が宙に浮いているか確認せよ

 世の中にはどのくらい速いカメラが存在するのか。

 それに答えるためにはまずはカメラの用途というものを説明しなくてはならず、ハイスピードカメラ発展の歴史について触れなくてはならないだろう。

 ムービーカメラがはじめて世に出たのは19世紀後半(正確には1895年12月28日)だった。しかし実は高速度撮影カメラの需要はそれ以前からあり、連続映写を考えない(撮るだけで動画として再生しない)カメラはそれ以前から存在していたのだ。

 1872年、スタンフォード大学の創立者リーランド・スタンフォードは「馬が走るとき4つの足全てが地面から離れる瞬間はあるか」を調べるための連続写真機を発注した。当時馬は常に1本の足を地面に着けていると考えられていたのだ。

 この注文を受けた写真家エドワード・マイブリッジは、12台の乾板をならべ、張り渡した糸を馬が切っていくにしたがってシャッターが落ちるという画期的な装置を発明した。
 これがいわば世界初のハイスピードカメラである。

 スタンフォードがこのカメラを発注したのは科学的研究というよりは乗馬仲間の賭けに決着をつけるのが目的だったようだが、当時の科学者がハイスピードカメラへかける期待は大きかったようで、マイブリッジはその後も世界各国の科学者と交流し多くの科学的成果をあげている。

 ともあれ世界初のハイスピードカメラが分析用途だったということは特筆すべきだろう。

 さてムービーである。
 キネマトグラフをリュミエール兄弟が発明し映画は興行として成立したが(それが1895年12月28日である)そのカメラは木製、駆動は手回しでスピードはわずか18コマ/秒だった。
 分析的用途としてハイスピードカメラへの期待は高かった筈だが、工業製品であるカメラの高速化には生産技術の発達を待たねばならなかったのだ。

 それが爆発的に進化したのは20世紀中盤である、後押ししたのが冷戦と宇宙開発だ。
 コンピューターによるシミュレーションなど無かった時代、未知の分野に挑む科学者の眼となったのがハイスピードカメラだった。

 ロスアラモスでは水素爆弾の爆発を撮影するために、ノ−スアメリカンロックウェルの実験場では宇宙船の衝突破壊を分析するために、無数のカメラが実験を記録し続けた。


 続く。


2008年05月07日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部