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特撮屋というより素材屋といったほうがよいような今日このごろ
ナパーム素材をオープンに立てたグリーンバック前で撮影です


* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 305 <フィルムとコマの話 その58> 掻き落とし機構ふたたび

 以前にも書いたことがあるがムービーカメラの心臓部である「掻き落とし機構」について説明したい。

 フィルムはパーフォーレーション(フィルムの穴)に差し込まれた「掻き落とし爪」によってアパチャーゲートという枠に押しつけられている。
(アパチャーゲートとはフィルムを固定し、平面を保持し、露光される画像のサイズを決定する金属製のフレームだ)

 アパチャーゲートの前では扇形の(口を開けたパックマンのような形の)シャッターが回転しており、その開口部がゲート上に来ると光がフィルムに到達して露出が開始される。
 シャッターが回転を続けるとやがて羽が光を遮る。
 フィルムに光が当たらなくなったところで掻き落とし爪がパーフォーレーションから引き抜かれる。
 爪は4パーフォーレーション上に移動して再び差し込まれ、ついで約19ミリ、フィルム1コマ分を引き下ろす(これを「掻き落とし」と言う)
 フィルムが停止するとシャッターの開口部が回ってきて次の露光が行われる。

 これがムービーカメラの露出の仕組みだ。理屈は簡単と言ってよい。

 問題(?)なのはその速度である。フィルムの走行速度は秒45センチだが肉眼では連続的に動いているようにしか見えない。
 実際にはこの『掻き落とし>停止>掻き落とし>停止』という間欠動作が行われているのだが、それと知っていても1秒につき24回止まっているようには見えない。

 しかもこれは動いていればいいというものではないのだ。
 露出時、フィルムが完全に静止していなければ記録された映像は使いものにならないだろうし、フィルムの停止位置(フィルムを送る量)にズレがあれば映写したとき画面はガタガタと揺れて鑑賞に堪えないものとなるだろう。間欠機構は高速かつ精密な動作が要求されるのである。

 そして掻き落とし爪とシャッターは連動している。つまりフィルムを送る速度=シャッターの回転速度であり、シャッター回転速度=露出時間ということだ。だからフィルムを送る速度が正確でなければムービーカメラは正しい露出を得られない。

 このほかにもカメラにはメカニカル動作する部分が多く存在するがそれらはすべて1個のモーターで駆動されている。したがってムービーカメラのモーターはその複雑なリンク機構を動かす大きなトルクと正確な回転という2つの要素を満たすものでなくてはならないわけだ。

 先に「24回止まっているようには見えない」と述べたコマ送りだが、フォトソニックというハイスピードカメラはこれを360回行う。
 精密さと正確さを維持したまま、この間欠動作を1秒360回行うというのはこれはもはや想像越えているとしか言いようはない。

 さてそのトルクと速度を達成するためこのカメラには200Vで駆動する巨大なモーターが付いているのだがそのモーターをもってしても回転は即座には上がらない。

 というか、このカメラは地響きのような音をたててスタートし、轟音を発しながらじわじわと速度を上げていくのだ。
 加速中といえどフィルムは消費されていく。うなりを上げるカメラのそばで火薬のスイッチを握り、次第に甲高くなっていくモーター音を聞きながら、カメラが定速に達するのをじりじりと待つ操演技師のプレッシャーは並ではない。

 この話(何回か先に)続く。


2008年06月04日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部