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「抜けるような青空」だったら、ブルーバックとして抜ける(マスクが取れる)んじゃない?
という冗談は昔からあったのですが、本当にチャレンジしてみました(結果は知らん)


* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 306 <フィルムとコマの話 その59> ハリウッド方式

 ハリウッドでは(というか日本以外では普通そうなのだが)撮影開始はまずカメラの回転からはじまる。
 監督の「カメラ」という声で撮影助手がスイッチを入れ、撮影助手はカメラが定速に達したのを確認して「ローリング」と声を返す。
 そこでクラッパーマンがクラッパー(カチンコ)を画面の中で叩く。
 彼/彼女が画面から退場したところで監督が「アクション!」と叫び、事が始まるというわけだ。

 一方日本では監督の「用意」が全ての始まりだ。この「用意」で撮影助手がカメラのスイッチを入れ、一瞬遅れて監督が「スタート」と言うと、助監督がカメラ前でカチンコを叩いて演技が始まる。

 ハリウッド方式だとカメラが回り始めてから演技が始まるまでに十数秒(ヘタをするともっと)かかるのに対し、日本方式では2〜3秒しかかからない、つまりはこれはフイルムを倹約するためのやり方なのだ。(この方式が可能なのはカメラが即座に定速に達するからである)

 しかしこの日本方式には若干の問題がある。
 カメラがちゃんと回っているかどうか確認する行程が省かれ、かつ「よーい、スタート」「カチン」までが一瞬のうちに進むため、トラブルがあってカメラが回転していないのに演技が始まってしまうことがたまにあるのだ。

 演技の場合は「ゴメン、もう一度」で済むが(役者にとっては冗談じゃないだろうが)特撮映画、アクション映画などでやり直しがきかないカットであった場合にはゴメンでは済まない。
 金のかかったセットが壊れてしまう、燃えてしまう、そんなカットでこれが起こったらえらいことだ。したがって「ここ一番」というカットに関しては、日本映画といえどハリウッド方式を取る。

 特撮映画ではやり直しのきかない撮影は日常茶飯事だし、ハイスピード撮影をおこなう場合は即座に回転が上がらないのでハリウッド方式で撮影されることが多い。

 とはいえ「ここ一番」という時にいつもと違う手順をとるのも危険な話だ。
 そこでこの方式で撮影する場合は、全員声を出してリハーサルを行う。

■監督 「カメラ」
■撮影助手 「ウィ〜〜ン」
(カメラが回っている音のつもり、本当にこう言う。芸の細かい奴は回転が上がる様を表現するため、語尾を高音にずり上げる)
「上がった!」
■監督 「スタート」
■カチンコ 「カチン」
(ここはハリウッドとは逆だが、カチンコきっかけがホネの髄までしみこんでいる日本映画ではここの順番を変えることは出来ない)
■私 「ダダダダダ〜〜ン」
(爆発しているつもり)
■監督 「カット」
■助監督 「消火!」


 という具合である。こう書くとバカみたいに聞こえるだろうが、このカットでトラブったらこの映画はオシマイ、という場合もあるわけで全員真剣そのものである。

 とある失敗談を紹介しよう・・と思ったが、長くなるので次回に。


2008年06月18日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部