写真
---> 拡大表示

リレーを使ったデジタルシャミセン(筆者製作)千年進んだシャミセンということで名前は「シャミー2000」
文中に出てくるオリジナルタイプは<Roll 184>の回の写真にあります。


* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 309 <フィルムとコマの話 その62> 続・天守閣を爆破せよ

 20個の火薬が一気に爆発した(ように見えた)撮影の続きだ。
 2日後、私はそのカットのラッシュ(現像されたフィルムを1ロールずつチェックする試写)を見て驚いた。

 一気と見えた爆発が分離して見えるのだ、というか一気すぎるだろうと思われた爆発が12倍速では「ドーン」「ドーン」と分離しており、天守閣に積み上げられた火薬箱が『一気に爆発した』という設定にしてはむしろ間延びしすぎなのだ。
 しかもその間隔が規則正しすぎる。シャミセンのターミナルは一定の間隔で並んでおりこれを一定の速度(「一瞬」だが)で接触させていくと爆発のタイムラグが機械的なまでに揃ってしまうのだ。

 火薬箱が引火して爆発していくというアナログな現象なのだから、あるときは数発が一気に、時には一瞬の間があって、とランダムな要素がなくてはリアルに見えないじゃないか(と、ど新人の私は生意気にも)思ったのである。

 しかし一気と見えた爆発さえ間延びして見える12倍速の世界。この中でいったいどうやって火薬に芝居をさせたらいいのだろうか。ハイスピード撮影おそるべし、と私は痛感したのだった。


 ハイスピード撮影おそるべし、というエピソードをもう一個紹介しよう。

 それは小学校の教室が地震で破壊され、陥没した床に机や椅子が吸い込まれる、というカットだった。

 美術部が手のかかったミニチュアセットをスタジオに組みあげた。

 教室のサイズは2m四方。1/8ほどの縮尺であるためきわめて精巧に出来ている。
 机と椅子が雑然と並び、給食袋が下がっている机もあり、正面には教壇と教卓、黒板に落書き、その隣に時間割り、教室の後ろにはお習字が張り出されている。何事も起こらなければ普通に小学校の教室を撮ったように見えるだろう。

 そしてこの床にはすでに仕込みがしてあった。教室の中心から放射状に5つの切れ目が入っており、教室のフチに蝶つがいで止められているのだ。そのままではすり鉢状に床が陥没するところを下のつっかい棒が押さえている。

 こういう仕掛けを「バタンコ」という。つっかい棒を引き抜くと床が落ちるというわけだ。

 ここまでセッティングされていると操演部の仕事は多くない。床が陥没した時「底」(スタジオの床)が見えないよう床下に土ボコリを発生させることと、つっかい棒にロープを結んで引き抜くことくらいだ。

 準備を始めようと思ったところが、ミニチュアを製作した美術部の責任者が「バタンコを俺たちにやらせてくれませんか」と言ってきた。「棒を引っ張るくらい俺たちでも」と思ったのだろう。

 私は破壊の責任者であり、誰がやっても失敗すれば私の責任になる。普通はOKしないのだが「いつも作るのは美術部壊すのは操演部、たまには最後までやってみたい」という彼らの気持ちがわからないでもなかった。

 そしてたとえNGになってもこれは簡単にリセットできるという読みもあった。
 机と椅子は床下の穴に吸い込まれるだけで破壊されるわけではない。下に毛布でも敷いておけばなお安心だろう。多少壊れたとしても自分たちの責任で直してくれるに違いない。

 問題はそんな一種のお遊びを現場でやっていいかどうかということだが、このミニチュアが半端でない力作であることは誰の目にもあきらかであり、美術部の苦労に報いようという気持ちは皆にもあったらしく、監督以下の許可も取り付けることが出来てこれは美術部による操演カットということになった。

 私はというと、うまく行くはずはないと思っていたのだが。

 続く。


2008年08月06日掲載

<--Back     Next-->

今日もカメラは回るの目次へ--->



Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部