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長年の研究により「火の粉」の完璧なコントロールを可能にしました。

蛍のようにか細いものからドラゴン花火のように盛大なものまで、いかようにも調整いたします。


* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 310 <フィルムとコマの話 その63> 陥没する教室:美術部編

 床が陥没する小学校の教室、その操演をミニチュアを作った美術部自らやることになった。

 私がそれにOKを出したのはリセットが簡単だと判断したからである。うまくいくとは思っていなかったということだ。正確に言えば「運がよければうまくいくかもしれない」というところだろうか。

 さてこの陥没する床は5つのパーツに別れておりパーツ1つに対して1本のつっかい棒が入っている。それをロープで引っ張って外すと床が落ちるのだ。

 撮影は5倍のハイスピード撮影となった。
(1/8のミニチュアの場合3倍速が適正だが、傾いた床を机や椅子が滑っていく様を少しゆっくり見せようというわけだ)

 ハードルが少し高くなったなと私が思っていると、

 「床は5枚一気じゃなく、パタパタッとタイムラグをつけて落としてね」と監督が美術部に指示を出している。

 あいや! と私は思った。

 『監督、それは言わないほうがいいと思って口をつぐんでいたことなのですが』ということだ。

 案の定、美術部は棒1本につき1人を配置し、俺が1番、お前が2番、と順番を決めている。これはいかんと思ったが一応「タイムラグは付けようと思わなくても付いちゃうんで意識しないほうがいいですよ」とサジェスチョンだけはした。

 実のところハイスピード撮影に多人数が参加する場合、タイムラグをつけないでやってくれ、というほうが難しいのだ。
 今回のような仕掛けの場合「いち、にの、さん」でロープを引くと決めても、「さ」で引く奴がいれば「ん」で引く奴も居る。「ん」を聞いてから一拍置くのんびりした奴だって居る。引く手の早さもそれぞれ違う、絶対合わないのだ。

 ズレがまったく許されないならつっかい棒を1本にするのが間違いない。仕掛けの都合上どうしても5人で取り付く場合は、

 『かけ声はいち、にの、さん。
   タイミングは、“さん”の「S」』

 ということまで決める。ほんのわずかのズレですら5倍に伸張されてしまうハイスピード撮影でタイミングを揃えるのは至難の技なのだ。

 だから始めから意識的にズレを作ろうとしようものなら間延びしすぎて使えなくなる。とはいえこれは体で覚えていくしかないものかもしれない。

 続く。


2008年08月20日掲載

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