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爆破された車の残骸、燃えるものが全て完璧に燃えた後に現代アートを感じたり(感じなかったり)。


* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 311 <フィルムとコマの話 その64> 陥没する教室:操演部編

 床が陥没する小学校の教室、いよいよ本番である。
 スタートはハリウッド方式(日本アレンジ)で行われた。

 監督の「カメラ」でカメラがスタート。
 撮影助手が5倍速に達したのを確認して「回った」と叫ぶ。

 ここで床下に待機している操演助手がホコリを噴出する。地震で床が陥没するからには穴のあいた床下は土ボコリが舞っていなくてはいけない。

  ■監督   「スタート」
  ■カチンコ 「カチン!」

 ロープを握る5人の美術部さんたちがカチンコを合図に順につっかえ棒を引き抜いていく。ガタガタガタと5ピースの床が落ち、精巧に作られた机と椅子がもうもうたるホコリの中に吸い込まれていく。

  ■監督 「カット!」

 美術部さんたちはよっしゃ! と喜んでいるがすでに私と監督とカメラマンは頭をひねっていた。
 たしかに目で見た限りでは床は気持ちよく順にカタカタッと落ちて行ったのだが、5倍のハイスピード撮影の場合「目で見て気持ちがいいようでは遅すぎる」のだ。

 普段ならチェックするまでもなく「NG、もう1回」になるところだが、うまくいったと思っている美術部にミニチュアをリセットしてもらわなくてはならないのでカメラから出力されたビデオを見てもらう。

 ビデオ出力は可変スローが可能なビデオデッキにつながれているので、仕上がりと同じ1/5速で見ることが出来るのだ。

 見ると、5つの床パーツが1枚づつカタン、カタン、と落ちて行く。

 落ちた床はスタジオの床に当たって止まるのだがその角度は45度ほどなので動いている時間はほんの一瞬である。

 結果1枚が止まって次が落ち、それが止まって次が落ちる、という絵になってしまっていた。「床にヒビが入り、自重に耐えきれず落ちた」という設定にしてはおかしな映像である。
 監督の欲しい絵は1枚目の床が落ちきる間に残りの4枚が順次落ちていくといったものだろう。

 結果を目のあたりにして美術部もそれがNGであることを納得した。
 幸いにも滑り落ちただけの机と椅子は、足の折れた物が数個あるだけで容易にリセット可能なようだった。

 私が「もう1回やってみますか?」と聞いたところ、美術部の責任者はブルブルと首を振り「いやいや、専門家にまかせないと無理だとわかりました」と言った。

 再挑戦。私は5人のロープ持ちに「カチンコで一斉に引け」とのみ指示を出した。

 これが全員操演部だったりするとうっかり揃ってしまう恐れがあるが、操演部は全部で4人しかいない。ホコリ出しに一人喰われているのでロープに付けるのは3人だ。つまり他のパートから2人応援を頼んでいる。まずもって気が合う心配はない。

 結果はほどよくバラけてOKとなった。
 ハイスピード撮影とはかように難しいものなのだ。

 続く。


2008年09月03日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部