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石油コンビナート火災の記録映像みたいな炎と煙が欲しいというご要望でした。



* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 315 <フィルムとコマの話 その68> 地底怪獣トンネルを破壊す

 ある怪獣映画で地底怪獣がトンネルを破壊するというシーンがあった。

 目撃者はトンネルの入り口からトンネル奥を見ている。トンネル奥は崩落しその崩れ落ちる土砂の向こうに通り過ぎていく怪獣が見える、というものだ。
 (地底怪獣は「地下を通行している」だけであり、たまさかトンネルを横切ってしまっただけなのである)

 監督の希望は「大量の土砂で怪獣の姿はよく見えない、それが怪獣であることはかろうじてわかるものの、どんな姿をしているのか判別できない」というものだった。

 撮影のために縦横1メートルほどのカマボコ型をしたトンネルが作られた。入り口から2メートルほど奥は崩落した造作になっており、その奥を怪獣が横切るようになっている。

 怪獣の通り道の上、崩れたトンネル上部にはスリットが開けられ、上から土砂が落とせるようになっていた。
 操演部の助手2名がそのスリットの両脇に立ち、パネルの上に乗せた土砂をザラザラと落とすわけだ。

 土砂は土、砂、石、セメント粉の混合物である。同じ重量なら粒の細かいものが多ければ怪獣は見えにくくなり、粒の粗いものが多ければ見えやすくなる筈だ。
 また土、砂、石は地面に落ちたあとは積もっていくだけだが、セメントは舞い上がって視界を悪くする。

 しょっちゅうこんなことをしている我々だが、やってみないとわからない事は多い。たまさかうまく行くこともあるのでいきなり本番となった。
(不確定要素の多いカットの場合、テストの時がいちばん良く、その後何回やってもテストのレベルに至らないということが多々あるのだ)

 ヨーイ、ハイで怪獣がトンネルを横切る(4倍速なのでかなりの早足だ)。2人の操演部は怪獣の上に土砂をザザザーッと落とす。もうもうたるホコリがトンネルに充満する。

 カットがかかるとビデオアシストのモニター前に監督、撮影部、照明部、美術部・・・ というか、スタッフ全員が集まった。

 操演部2名はこのカットの主役でありながら自分たちのやったことがどういう効果を生んでいるのか見えていないのでかぶりつきに座っている。
 しかしビデオを見る前からすでに監督が「今のだと見えすぎだと思うな〜」と言う。
 4倍速で再生、たしかに土砂の向こうに怪獣の姿がうっすら見える。

 ノーマルスピードで収録されたビデオだと、土も石もあればこそ落ちかかる土砂はすべて縦に伸びた筋になっている。これは秒30コマであるためだ。しかし4倍速で撮影されたフィルムなら大きな粒はバラけて見える筈であり、粒が分離して見えればその向こうはクリアに見える筈なのだ。

 つまるところビデオアシストはハイスピード撮影のモニターには力不足なのである。

 監督が「ビデオアシストじゃ怪獣が見えないくらいでないとダメだ」という。もっともな話だが、それはどうやって調整すればいいのだろう。

 怪獣が見えないとして、ビデオだから見えていないのか、そもそもフィルムですら見えていないのかを判別することができるだろうか。

 この話続く。


2008年11月05日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部