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疑似海底(以前にも紹介しましたが)撮影中



* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number 




Roll 316 <フィルムとコマの話 その69> 地底怪獣の逆襲

 崩れ落ちる土砂の向こうを怪獣が進む。
 監督の要望は大スクリーンで見てはじめて怪獣とわかるほどの大量の土砂というものだ※注

 4倍速のフィルムではじめてわかる、ということは解像度低くノーマルスピードでしか収録できないビデオアシストでは「見えていてはいけない」ということになる。

 (ならばこの場合ビデオアシストは役にたたないか・・・ というとそうではない。少なくとも「ビデオで見えていたらNG」という目安にはなるからだ)

 この調整は操演部の腕にかかってくる。土砂を手で滑り落とすという超アナログな作業だがデーターと勘で調整していく他はない。

 まずは怪獣が見えなくなるギリギリの量を探る必要がある。そこで
 「土砂の全体量を1カット目の2倍、そのうちセメント・砂の割合を多めに」と指示を出す。

 土砂は調整可能なように、砂と土それぞれバケツ2杯、石1杯、セメントは紙コップで1杯などとデーターを取ってある、ブレンドのやり直しである。
 全体量を倍にして落とす時間を同じにすれば理屈では土砂の密度が倍になるだろう。

 同じ時間内でカラになるように、それと落ち方が均一だったので、少し強弱つけて、と助手2名に注文を付ける。

 再び本番。

 今度は怪獣のシルエットがほとんど見えなくなった。けっこういい所へ来たと思うが、「ほとんど見えない」とは「見えている」の意であり、4倍速ではけっこう見えている(かもしれない)
 これを下限と決め、上限を探るため更に土砂を3倍量とする。

 3度目の本番。

 今度はチラとも見えない、まるで見えた気がしないというシャッター具合になった。おそらくフィルムにも映ってないだろう。
 映写したらこれでも怪獣が認識できた、ということになったならこれをOKカットにしよう、ということで上限も決まった。

 下限と上限が決まったので、その間を埋めていく。

 全体量を変えて、土を多く/少なく、砂を多く/少なく、石を、セメントを・・・

 落とす際の強弱をもっと付けて、土砂無しというくらい少ないところを作って、今度はフラットに・・・

 一度土砂を落とすとトンネル内部は埋まってしまう。1カットごとにスタッフ総出で掃除をする。シジフォスのごとき労働を繰り返すこと数時間。

 わずか数秒のために十数回テイクを繰り返し「どれか使えるだろう」ということでやっと監督OKが出る。

 (再び言うが)ハイスピード撮影とはかように難しいものなのだ。


 続く。


※注:
 映画屋は、撮影時には「大スクリーンに映写してこれがどう見えるか」ということしか考えていない。
 したがってこのようにギリギリの調整をした映像はDVD・小型TVなどではつぶれて見えないということが起こる。
 よってスペクタクルな映像がウリの映画は是非とも劇場で見ていただきたいと思う。



2008年11月19日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部