* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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日活9番ステージにて。
ザイルを結んでおける場所があるかどうかは操演部にとって非常に重要です。最新のTVスタジオだと壁がツルンとしていてどうにも困ったことになりかねません。そういう意味では古いスタジオのほうが仕事が楽だったりします。





Roll 318 <フィルムとコマの話 その71> モーションコントロールの夜明け

 ビデオアシストが無かった時代、カメラマン以外のスタッフにとって初めてそのカットと対面するのが試写室だった。

 各パートとも「大丈夫」と思っている筈だが(でなければOKに対して異議をとなえている筈なので)気がかりな部分がまったく無いわけはない。

 実際、現場で見ていたかぎりでは問題ないように見えたカットが・・・

  • パンが行きすぎて、画面の端にライト足が見えていた
    (カメラマンのミス)
     
  • 近づいてくるミニチュアにフォーカスがついていかなかった
    (撮影助手のミス)
     
  • 操演クレーンの影が吊っているミニチュアに落ちた
    (照明部のミス)
     
  • ミニチュアが地面に激突するより先に爆発した
    (私のミス!)

 などなど、スクリーンに映写して初めて気がつくミスはあるものだ。

 試写室は真剣勝負だったのである。



 ハイスピード撮影とはちょっと話が逸れるのだが、ここで試写室がかつてどんな場所であったかという話をしてみたい。


 それは私がまだまだ下っ端だった頃、モーションコントロールという言葉が海の向こうから聞こえてきたばかりの頃だった。
 あるSF映画で「宇宙人が光のリングの中に浮かんでいて、カメラがトラックアップ(近づいて行く)していく」というカットがあった。

 「光のリング」とは監督のイメージでは金環食の時に月のまわりに見られる、燃えるような、不定形に輝く光の輪、というものだ。

 もちろんCGなど無い時代でありこの光の輪もアナログで作らなくてはならない。
 検討の結果、直径1メートルほどの玉のまわりに食品保存用ラップフィルムを巻き付け、後ろからライトを当てるということになった。

 ラップをキッチリと巻き付けずに適当にシワを作っておく、そして後ろから強い光を当てる。これを正面から見ると玉のフチの部分のラップが光を透過してリング状に光ってみえるのだ。

 そのままでは動きがないので玉をモーターで回転させる、するとラップの厚みが変化してチラチラ輝いて見えるというわけだ。(光の当たっていない正面側は真っ暗なので玉が回転しているという印象はない)

 問題は光の中心に浮いている宇宙人との合成である。

 宇宙人の作り物はリングとサイズ的には合うのだが(というか、それに合わせて玉のサイズが決まったのだが)、ライティングがリングと宇宙人ではまるで違うので同時には撮れない。(そもそも回転する玉の中心に置けるわけもない)

 置き換えて2度撮るしかないわけだが、問題はトラックアップである。しかも監督の要望は「宇宙人を中心にカメラが左右に揺れながら近づく」というものだった。

 これは左右に揺動しつつトラックアップするというカメラワークを、リング、宇宙人の2回同じ動きで再現しなくてはならないということだ。

 モーションコントロールである。


 続く。


2008年12月17日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部