* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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タイヤ移動車で煙素材撮影中。
非モーションコントロールの極み、特機さんの腕の見せ所です





Roll 319 <フィルムとコマの話 その72> モーションコントロールを開発せよ

 「このカットはモーションコントロールでないと撮影不可能だ」という話の続きだ。

 モーションコントロールとはコンピューターでカメラワークを制御するということであり、その目的は同じ動きを何度でも繰り返すことにある。

 『スターウォーズで使われたそうだ』という話こそ入ってきてはいたものの、日本で本格的に導入された作品はなく、各所で手探りで開発が続けられていた時代だ。

 ひとつチャレンジしてみよう、ということになったのは大いに結構なことだったが問題は「お前が開発しろ」と命令されたことだった。

 当時私がPC-8800というコンピューターを持っており「マイコンホビイスト※1」であることが周囲に知られていたからだが、これは質が違う話だ。

 「えーと、私は私立文系で、あれはホビーで」と抗弁したのだが「お前しか居ない」と操演部のボスに断言されてしまった。

 要するに誰もわかっていなかったのだ。誰もわかってない、ということがわかるだけ私はマシだったのかもしれない。

 他のことはいいからそれに専念しろと言われ、1ヶ月の猶予が与えられた。

 もちろん理屈はわかっている。カメラワークの動力をすべてステッピングモーターに置き換えればよいのだ。

 ステッピングモーターとは1パルス送るたびに0.72度回転するモーターである。500パルスで1回転、秒5,000パルス送れば1秒間に10回回転することになる。

 パルスジェネレーターにコンピューターを接続し、速度とパルス数をコントロールすれば何度でも同じ動きを繰り返すことが出来るというわけだ。

 問題なのは、モーターやパルスジェネレーターボードの仕様書を見ても素人にはちんぷんかんぷんなことだ。あたりまえだがこれは制御機器屋のためのプロ仕様の機械なのだ。

 とはいえこれも仕事である。最新鋭の「ハンドヘルドコンピューター※2」PC-8200を購入し、制御機器を扱う会社と噛み合わない話をし、制御の勉強を一から始めてシステムを組むしかなかった。

 撮影が進む中、私は一人で手作りのモーションコントロールシステムに取り組んだ※3


 続く。


※1:当時コンピューターと言えばそれはメインフレーム(大企業の計算機室に鎮座している大型コンピューター)を指し、個人所有のそれはマイクロ・コンピューター「マイコン」と呼ばれていた。
市販のソフトやゲームなどほとんどない時代であり、マイコンを所有する人はほとんどが「マイコンホビイスト」であった。彼らは(我々は)コンピューターを使いこなすこと、プログラミングすること自体が楽しかったのだ。

※2:ラップトップコンピューターとかノートパソコンなどという言葉はまだなかった(というか、パソコンという言葉がなかった)。

※3:勉強のための勉強は身に付かないが、目的がはっきりしていて期限があり、なにより自分の仕事にどうしても必要となればなんとかなるものである。


2009年01月07日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部