* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


写真
---> 拡大表示

モーションコントロール用のカメラヘッド
2つのステッピングモーターでパンとティルトをコンピュータ制御します





Roll 321 <フィルムとコマの話 その74> IMAXの逆襲

 昨今、ビデオ撮影される映画が増えてきた。世の趨勢として映画はどんどんデジタルシネマ化されていくのだろうか、と思っていたのだがどうやらそうでもないようだ。

 というか、まずデジタルありきという製作手法の見直しの機運さえあって、たとえば昨年公開された『ダークナイト』(2008年/米国)などは「可能な限りCG、デジタル合成を使わない」という方針に加え、多くのシーンがIMAXで撮影されていた。

 IMAXとは70ミリフィルムを横走りさせて使用するシステムで、フィルム面積が通常の10倍以上ある史上最大の撮影/上映方式である。

 日本では『ダークナイト IMAX版』の一般公開はなく、35ミリに縮小焼き付けされた通常版しか劇場で見ることが出来なかったのだが、それでもIMAX撮影シーンの画質の美しさは際立っていた(このへんの事情についてはRoll 271あたりを読んでいただきたい)
 このダークナイトが『タイタニック』(1997年/米国)についで史上第2位の興行収益*を叩きだしたことによりハリウッドではIMAXが再評価されていると言う。
 今後もIMAXで撮影される映画が出てきそうだという話を聞けば、ムービーも急に廃れてしまうようなことはなく、劇映画におけるフィルムトーン(フィルム特有の色調)もしばらくは安泰かもしれない。

 という話をしたところで、以下本題。


 さて、ムービーというものが発明されてから110年が過ぎた。ムービーカメラは進化し、カメラ本体も今や液晶表示やら発光ダイオードやらでいっぱいだ。見たところかなりのハイテク機械のようにも見える、しかし実はその基本構造に変わりはない。

 つまり、今だにカメラは1本のシャフトを回転させることにより駆動されている。
 その回転がフィルムを送り出し、シャッターを回転させ「掻き落とし爪」を動かし、撮影済みのフィルムを巻き取っている。この仕組みはルミエール兄弟のキネマトグラフと変わらない。

 変わった点があるとすれば、昔カメラマンが手で回していたクランク棒の変わりにモーターがついているということだけだ。(ハイテク装備? は正確だったり便利だったりする仕組みに使われているのだ)
 だから今でもムービーカメラはモーター軸を手で回せば撮影できてしまうし、16ミリカメラはちょっと前までゼンマイ式が現役だった。

 これが何を意味するかというと、つまりムービーの場合、撮影自体はメカニカルな動作によって行われているということなのだ。

 ところで、スチールカメラにはモータドライブというものがある、早いものだと1秒のうちに10コマ以上撮影できる、しかし連射速度とシャッター速度が連動してはいない。
 つまり秒1コマ撮影しているときに1/100秒のシャッター速度であったものが秒10コマになった時には1/1000になるということはない。
 もちろんこれはあたりまえなことで、適正な露出を得るためのシャッター速度は1秒に撮影されるコマ数とは無関係だからだ。

 しかしムービーカメラはそうではない。
 ムービーのシャッターがフィルムの前で回転している半月形の円盤であることはかつて述べた。この円盤もコマを送る爪も全てのメカは連動している、だから軸を早く回せばシャッター速度は速くなり、遅く回せば遅くなる、ムービーカメラの場合コマ数=シャッター速度なのだ。

 すると何が起こるか、という話は次回に続く。


※編集部注
 ●米国における歴代 興行収益TOP3
  1位:『タイタニック』(1997年) $600,788,188
  2位:『ダークナイト』(2008年) $531,026,626
  3位:『スターウォーズ』(1977年)$460,998,007
    (Box Office Charts USAより/2009年1月現在)


2009年02月04日掲載

<--Back     Next-->

今日もカメラは回るの目次へ--->



Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部