* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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通常パンフォーカスになる筈の工事現場の写真。
この前後のフォーカスをボカしてやると
本物なのに(本物ですよ)ミニチュアに見えてきます





Roll 322 <フィルムとコマの話 その75> 被写界深度

 ムービーカメラのシャッターはフィルムの前で回転している半月形の円盤だ。1コマにつき1回転するので通常は1秒間で24回転する。
 半月形のシャッターは1回転のうちの半分を露光、半分をシャッターしているのだから、シャッタースピードは1/48秒だ。

 ムービーカメラのシャッターはコマ数と連動しているのでこれを5倍速のハイスピード撮影にすると1/48秒の5倍速、1/240秒となる。

 これはムービーカメラでコマ数を選択すると必然的にシャッター速度が決まってしまうということで、露出の調整は絞りでおこなう以外ないということを意味する。



 さて今はハイスピード撮影についての話をしている最中なのだが、「絞り」という言葉が出てきたので、ここで「被写界深度」というものについて説明しておく必要があるだろう。

 カメラのフォーカス(ピントとも言う)は合わせた距離ちょうどの位置にあるものにしか合わない(カメラから等距離にある「面」と交差している物にしか合わない、といったイメージだろうか)。
 しかし、実際にはその前後に「実用上フォーカスが合っていると見なしてよい」範囲がある、これを「被写界深度」という

 この範囲が広いことを深度が「深い」といい、狭いことを「浅い」という。そして被写界深度には3つの特徴がある、それは・・・

     
  1. 望遠レンズより広角レンズのほうが深い
  2.  
  3. フォーカス面がレンズから遠くなるほど深くなる
  4.  
  5. 絞りを絞るほど深くなる


 ということだ、注目して欲しいのは2と3である。

 つまり絞りを開けていくと被写界深度はどんどん浅くなる。人の横顔を撮っているとき手前の目にフォーカスを合わせると反対側の目はボケている、といった状態になってしまう。
 人物写真ではこれを撮影効果として狙う場合もあるが、特撮の場合、ミニチュア自動車のフロントガラスにフォーカスを合わせたらボンネットはボケてます、という状態になってはまずい。

 なぜなら本物の自動車を撮ったときは絶対そうならないからだ。

 被写界深度は『2.フォーカス面がレンズから遠くなるほど深くなる』ため、たとえば標準レンズだとカメラから数メートル以上離れたものにはみなフォーカスが合う。
 この「写っているもの全てにフォーカスが合っている状態」をパンフォーカスというのだが、自動車の写真はパンフォーカスが当たり前なのだ。

 だから「撮影速度を5倍速にすると露出時間が1/5になる、露出不足になるから絞りを5倍開ければよい」というわけにはいかないのだ・・・ すくなくともミニチュア撮影の場合は。

 ではどうするかというとライトをガンガン当て、必要なだけ絞って撮るしかない。どれだけ絞る必要があるのかは、そのミニチュアを撮影するにあたってどこまでフォーカスが合っていれば「許せる」かによって決まる。

 『ガメラ‐大怪獣空中決戦‐』で、怪獣ギャオスの足下のアップを撮る際、被写界深度が足らずライトを当てに当てていったところが、ライトの熱で接着剤が溶けてミニチュアが崩壊し、作業の都合で頭をライト前に出すと髪の毛が焦げて煙が出るという騒ぎになったことがあった。

 まあここまでくると撮影計画のミスと言ってよいのだが、特撮、特にハイスピード撮影をおこなうミニチュア撮影の場合はより多くのライトが当たっているということを覚えておいていただきたい。

 というところでハイスピードの話に戻ろうと思ったが、けっこう長くなってしまったので続きは次回に。


2009年02月18日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部