* 連載フォトエッセイ*

「今日もカメラは回る」

  文・写真/根岸泉 --->Back Number


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1000フィートフィルムロール





Roll 324 <フィルムとコマの話 その77> フォトソニックと退屈なラッシュ

 前回、フォトソニックは定速に達するまで時間がかかると述べた。

 ムービーにはシャッター速度に合わせて絞りを調節するような気の利いた仕掛けはないので、この部分のフィルムは露出オーバーになっている。

 更に言えば、この露出オーバー部は「本番」部分の後にも続いている。
 監督の「カット」でオペレーターはスイッチを切るわけだが「カメラは急に止まれない」のだ。

 加速するのに時間のかかるカメラは止まるにも時間がかかる。だんだんフィルムの走行速度が遅くなり、シャッター速度も遅くなっていく部分はやはり露出オーバーとなっている。

 通常10分の撮影が可能な1000フィートフィルムは、10倍速で回せば1分で消費されてしまう。理屈では15秒のカットを4回撮れそうなものだが、その前後にこういった加減速部分があるのでそうはいかない。
 実際には2カット回したという話を人の噂で聞いたことがあるくらいで(それですらどうやってスタートとカットをかけたのか謎なくらいで)私自身は1000フィートで1回こっきりの撮影以外やったことがない。

 このようにして撮られたカットといえど10秒使われていれば長いほうだと言えば、いかにハイスピード撮影が贅沢なものなのかわかっていただけるだろう。

 そのような(フォトソニックがオペレーターを連れて現場に来るような)贅沢は5倍速程度は日常である特撮現場でもそう頻繁にあることではない。

 というわけでフォトソニックのラッシュはスタッフ皆ワクワクしながら見ることになるのだが少しばかり困ったことがある。それは前後が長すぎるということだ。

 現像されたネガをそのままポジフィルムに焼き付けたフィルム(これを「棒焼き」と言う)の場合、その前と後ろには露出オーバー部分が長々と付いているのだ。

 実際にこれが試写室でどう見えるかというと・・・


 はじめに暗黒部分がしばらく続く。
これはオペレーターがフィルムの走行チェックのためレンズキャップをしたままカメラを回した部分だ。

 次に画面は真っ白になる、これが本番時のカメラスタートだ。
スタート直後のカメラはゆっくり回っているので、その分シャッター速度が遅く、画面が完全に真っ白になってしまうわけだ。

 しばらくたつと次第に画面が見え始める。
この部分も露出オーバーであることには変わりないが何が写っているかくらいは見えてくる。
 この時、画面内に動くものがあった場合は、その動きがだんだんスローになってゆく。最初が秒24コマで最終的に秒240コマになるとすればその動きはノーマルから10倍速のスローモーションにまで無段階に変化していくわけだ。

 白トビしていた画面がだんだん適正露出になってゆき、動きがスローになってゆき、全て予定どおりになった時初めて「本番」となる。

 爆発なりクラッシュなりの絵がそこで展開され、終わると画面は再び露出オーバーになり、動きが速くなり、やがて真っ白になって終わる。


 スタッフは「使える」部分の何倍もの長さの露出オーバー部分を見るハメになるわけだ。意味のない絵を見ていると飽きるし、撮影が佳境に入っていて睡眠不足になっていると意識が飛ぶ(こともある)。

 ハイスピード撮影のラッシュもこれだけは勘弁してほしいものだ・・・ と思っていたのだが、この無駄の部分を撮影効果として利用できないかと考えた男がいた。

続く。


2009年03月18日掲載

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