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(C) MIka Ninagawa


* 週刊フォトエッセイ*

NinaMika Weekly 週刊ニナガワ通信

  文・写真/蜷川実花 --->Back Number × 中山慶太




§キューピッドとサイケの堕天使 #1§(jul.2003 #01)

 久し振りに「私的・蜷川実花論」を書くチャンスがやってきた。彼女の写真については、今では雑誌や書籍でたくさんの批評が読める。ニナミカの世界を視覚のイメージでとらえるだけでなく、きちんと文字で解きたいひとにとって良い時代になったものだと思う。
 そう書くとずいぶんベテランの作家みたいだが、蜷川実花というひとの写真が印刷物やデジタル信号で広がりはじめて、まだ10年もたっていない。キャリアの長いファンでも、たぶん5年選手くらいのひとが多いはずだ。
 そういえば彼女が言っていた。「あたしの写真をぜんぶ観ているひとって、きっといないと思うよ」。この場合の写真とは、広告や雑誌、または作品集など何らかの媒体で発表されたか、または個展の壁に掛かった作品のことだ。
 それが何点くらいあるのかと聞くと、彼女にも即答できないという(最新の仕事リストは公式サイトに載っているけど、全部を網羅してはいないらしい)。この僕にしても、ずっと以前に買ったCDのジャケットにMIka Ninagawaのクレジットを発見することがある。情けない話だけど、たぶん僕が目にしている写真はモーツァルトの曲とおなじくらいだ。好きな作家の仕事に精通しているつもりでも、実はほんの一部しか知らないのだ。多作家を追うファンはたいへんだ。
 それじゃあ全部を知らなければ蜷川実花を理解できないかといえば、そんなことはない。カンのいいひとなら本屋で代表的な作品集を立ち読みするだけ、いや雑誌の2〜3ページをめくるだけでわかるはずだ。こう書いたら彼女は怒るかもしれないけど、それくらいに蜷川実花の写真はわかりやすい。モーツァルトやドビュッシーやサティの作品のように、曲名は知らなくても最初の数小節で心惹かれる。ベートーベンと違って、そこから先の展開で飽きることもない。
 ところが、彼女の写真を言葉にしようとすると、これがけっこう難しい。適切な表現が見つからない。はっきりとした実体は、ゆらゆら揺れる水鏡の風景のようにつかみどころがない。
 たぶんこの連載が長続きしているのは、水を手につかむような無駄な努力をしないからだろう。
 それでもたまには水に手を入れてみたくなることがある。

※蜷川実花さんの公式サイト
 最新情報、過去の仕事や作品集はこちらでチェック!!


2003年07月09日掲載

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