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※撮影:中山慶太


* 週刊フォトエッセイ*

NinaMika Weekly 週刊ニナガワ通信

  文/蜷川実花 --->Back Number × 中山慶太




§チープトリップの謎(2)§(nov.2003 #02)

 物語はふたりのヒロインと彼女たちをとりまくひとびとの、ちょっと冷めた触れ合いによって描かれる。
 登場人物はぜんぶで9人。状況説明のためのセリフや仕草は与えられていないから、人物の配置と物言いと行動にはすべて意味が込められているはずだ。
 主人公のふたりは対照的なキャラクターで、だからこそ惹かれあう部分があるらしい。自分に欠けた部分をほかの誰かで補う。ジグソーパズルだってそんなことはできないのだけど、動と静、陰と陽の対比のようなふたりの距離が少しずつ近づいていくところに、観るひとの感情が入るポケットが仕掛けられている。だからこのふたりは主人公であると同時に、観るひとをこの作品の世界に導くシャーマンのような存在だ。
 では、この世界をつくっているのはどんなひとたちだろう。
 冒頭で主人公・千春の逃避行のきっかけをつくった父親とパートナーの女。その女の食事の作法を嗤うドライブインの男。もうひとりのヒロイン、真琴と同居する自殺マニアの老人。ボートを借りに来たカップル。
 この個性的なサブキャラクターたちのなかでも、ひときわ重要な役割を与えられた人物がいる。真琴が経営する? ボートハウスと遊戯施設(実はフリマ)で寝起きするホームレス風の外国人、ハマドだ。
 寂れた観光地のボランティアガイド? であるハマドは、ちょっとシュールな言動が目を引くけれど、その実体はしごくまっとうな人間である。変なひとだけど実はまとも、というのはドライブインの男もいっしょだ。ハマドの場合、そのまっとうさが買われて作品世界のガイド役も兼任している。だから彼のセリフには注意した方がいいと思う。

 千春と真琴の世界は、どんなに近づいてもひとつにはならない。それはコインの裏表のようなものなのだ。そのウラオモテのある世界の設計にも、この作品を解くいくつかの鍵がある。

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2003年11月12日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部