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※撮影/中山慶太


* 週刊フォトエッセイ*

NinaMika Weekly 週刊ニナガワ通信

  文/蜷川実花 --->Back Number × 中山慶太




§「MIKA」によせて(4)§(jun.2004 #04)

 いぜんこの連載で、僕自身の撮った写真を蜷川実花に評してもらう、という試みを紹介したことがある。その時のエピソードは面白可笑しく書いたけれど、あの時の彼女の目はほんとうに真剣だった。ふだん僕と話をするときには切ってあるスイッチが入ったのだろう。たぶんそのスイッチには「サッカノシゴト」と書いてあるはずだ。

 またあるとき、写真家志望の女性を彼女の事務所に連れて行ったこともある。緊張のせいか、まともに話せないその女性を前に、蜷川実花は辛抱強く仕事のことを説明し、適切なアドバイスを与えていた。たまに冗談で「人生相談は得意なの」と言うけれど、きっとそういうときは「ソウダンヲキク」と書かれたスイッチが入ってるのだろう。
 そう、蜷川実花というひとはスイッチの切り換えがきちんとできるひとである。リラックスするときはモードを切り換えてテンションを下げている。でもひとたび仕事のモードに突入すると、そのテンションは一気に上がる。写真家ならあたりまえだけど、彼女の場合はその切り換えが実に鮮やかで、しかも常に周囲に余分なプレッシャーを与えないように気を遣っている。
 これは僕の想像だけど、そういうオンオフの切り換えは、たぶん彼女が父親から影響を受けた部分なのではないだろうか。これまで蜷川実花は「父の仕事との共通性はない」と語り、また蜷川幸雄氏もおなじことを言っていたのをTVで観たことがあるけれど、この父娘のあいだには仕事のスタイルでどこか共通点があるような気がしている。といっても、僕は蜷川幸雄氏の現場を観たことはないのだけど。

 スイッチを切り換えるといえば、彼女はいつも複数の仕事やテーマを同時に進めている。仕事のジャンルでいえば雑誌やCDジャケットや広告などがそうだし、写真のテーマも「」や「金魚」など、おなじ時期に何本か同時進行させている。
 この業界のひとなら理解できるはずだけど、商業写真家と写真作家の撮影スタイルというものは、おのずと異なるものだ。前者は依頼者の意図を汲んで進める必要があるし、後者は自己の内面に問い続けなければいけない。そういうふたつの現場を自由に行き来できるとすれば、ここでもスイッチの切り換えができているということだろう。
 蜷川実花については語ることはまだまだある。でも僕の勝手なおしゃべりはこのあたりで止めておこう。すべては「MIKA over the RAINBOW」という写真展と作品集で語られているはずなのだ。それとも、蜷川実花は彼女一流のカンで、謎の部分を残しておくのだろうか。
 できれば残しておいて欲しい、と思う。謎解きをするのがこんなに楽しい作家は、そういないから。


■蜷川実花さんの公式サイト
 最新情報、過去の仕事や作品集はこちらでチェック!!

■蜷川実花さんのガールズフォトを集大成した写真集
 「mika」「over the rainbow」
 6/25 ON SALE(講談社より2冊同時発売)

■蜷川実花さんの個展「MIKA over the RAINBOW」
 6/27〜7/11
 会場:ラフォーレミュージアム原宿


2004年06月23日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部